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LGBT(セクシュアル・マイノリティー)理解へ企業の取り組み進む

      ゲイジャパンニュース、日本総研に対しワークショップを実施

中井伸二2009/07/30
ゲイジャパンニュースの新しい取り組み
 ゲイジャパンニュース(以下、GJN)は、この7月8日、三井住友フィナンシャルグループのシンクタンクである日本総合研究所の総合研究部門(以下、日本総研)に対して、LGBTダイバーシティ・ワークショップ(*1)を実施した。講師には、ゲイジャパンニューススタッフの他、世田谷区議会議員の上川あや氏(*2)が参加した。

 今回、GJNが実施したLGBT(*3)ダイバーシティ・ワークショップは、企業に対し、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどの性的マイノリティに関する理解を深め、従業員・顧客・取引先・株主や地域社会など、企業と関わりのあるステークホルダー(利害関係者)における多様性を尊重する企業倫理や経営を実践してもらうことが目的。

 海外では、これらの取り組みが企業の社会的責任(CSR)として認識され、リスクや危機管理の観点にとどまらず、企業価値向上に繋がるとして、多くの企業で実践されている。

 上川あや議員は、「性的少数者と人権」というテーマで講演。自らの生い立ちとともに、多様性の問題は「マイノリティ」と呼ばれる人に限らず、すべての人に関係のある問題であるということや、日本のLGBTが置かれている現状などを説明した。

 LGBTダイバーシティ・ワークショップに参加した日本総研の山田正孝主任研究員は、
 「昨年より、LGBTと企業の関わりについて調査・研究を進めているが、当事者の方々による講演の受講によって、LGBTの方々がおかれている正確な現状を鮮烈に感じることができた」

 「このような活動を通じた性的マイノリティに対する理解の向上は、LGBT社員の職場環境の良化に留まらず、将来的には更なる相互認識を高めることで、企業活動のパフォーマンス向上を促すものと認識している」

 「閉鎖的な日本の社会において、積極的に活動されている講師の方々に敬意を表すると共に、我々としてもシンクタンクとしての活動を通じ、LGBTの方々と企業の相互理解を深めることに貢献できればと考えている」

 ……と話した。

 ゲイジャパンニュースでは、企業や団体のLGBTに関する取り組みを積極的に支援している。LGBTを含むすべての人が尊重され、機会が平等に保障される社会の実現に向け、LGBTダイバーシティ・プログラムの他、世界各国のLGBTに関するニュース配信、チャリティ・イベントの開催、国内外のLGBT団体との連絡や、国連の人権機関へのNGOレポートの提出などを行っている。

 〔ここまで、GJNより承認を受けて転載〕

(*1) ダイバーシティー【diversity】
 多様性を意味する。「ダイバーシティー経営」とは、多様な価値観を重視した企業経営のことで、年齢・性別・性的指向・障害の有無・人種・民族・文化・キャリアなどに基づく多様な価値観、多様な人材を、企業経営に活かそうとの経営方針を言う。多民族社会を擁するアメリカで誕生した概念。

(*2) 上川あや
 2003年4月、統一地方議会選挙(東京都世田谷区議会議員選挙)において、日本で初めて性同一性障害(MtF)を公表して立候補。5024票を獲得して当選(立候補者72人中、第6位)。2005年4月、性同一性障害特例法に基づいて、戸籍上の性別変更を認められる。2007年4月、統一地方議会選挙(東京都世田谷区議会議員選挙)において、6572票を得票し、再選(立候補者71人中、第2位)。

(*3) LGBT
 レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの包括的呼称。

参考:
日本総研
世田谷区議会議員・上川あや
ゲイジャパンニュース
(内外のLGBT関連のニュースを主体的に収集してレポートする、非営利・ボランティアベースの報道サイトで、LGBT自身によって運営されている)

LGBT(セクシュアル・マイノリティー)理解へ企業の取り組み進む | 人々は多様性にあふれる(記者撮影)
人々は多様性にあふれる(記者撮影)
ダイバーシティ経営のフロントリーダー
 日本IBMは、2008年2月、LGBTが性的指向についてネガティブな隠忍を抱くことなく、伸び伸びと働きやすい職場環境を整備しようとの積極的な社内方針を打ち出し、『ダイバーシティ委員会』と呼ばれる社内組織を設置。その初代委員長には、当時、同社の代表取締役社長だった大歳卓麻氏みずからが就いた。

 このダイバーシティ委員会の中に『セクシャル・オリエンテーション(性的指向)部門』を設置したことが、とくに画期的で、
 「国内外を問わず、LGBTの立場をこれほど積極的に尊重しようとする企業は少ない」(日本IBM・広報担当者)としている。

 日本IBMは、日本国内の大手企業に先駆け、
 「国籍や性別、同性愛のような性的指向など個人の多様性を尊重することが、自己実現が可能で活力のある企業文化の育成や発展につながるという考え」(同担当者)を体現することとなったわけである。

 確かに、日本IBMがアメリカ資本の企業だからこそ、このような先進的な取り組みを、いち早く採り入れるに至ったと考えることは可能だ。心を狭くして解釈すれば、「どうせ、外資系だけの話だろう……」と、やっかみ半分になってしまうかも知れない。だが、心広く、素直に日本IBMの主導精神を歓迎するべきだ。

 ゲイであることを隠すことなく、むしろゲイであることの可能性を尊重された上で働ける職場環境だと聞けば、当事者の一人である僕もまた、日本IBMへの就職を目指したくなる。

 いっぽう、日本の大手企業にも、早くからダイバーシティ経営に乗り出したところがある。

 富士通は、「多様性を尊重し成長を支援する」企業指針に基づき、2008年6月に『ダイバーシティ推進室』を設置した。同社の『雇用における人権尊重に関する指針』によれば、
 「FUJITSUは、人権の尊重を根底に据えた企業活動を展開するにあたり、それぞれの国や地域におけるさまざまな人権問題に取り組み、人権問題の本質を正しく理解し、認識し、差別のない明るい企業づくりに向けて組織的に取り組みます」

 「FUJITSUは、人種、皮膚の色、宗教、信条、性別、社会的身分、門地、障がい、性的指向、およびその他のビジネス上の正当な利益と関係しない要素に基づく差別を致しません」

……と、なっている。

 また、女性社員の割合が8割を超える資生堂には、元来「女性社員の活躍を支援することが企業の業績に直結する」との社内意識が強いとのことだが、2009年4月、同社人事部の中に『ダイバーシティ推進グループ』が置かれ、男女共同参画活動のほか、積極的な人権啓発、障害者の雇用、仕事と仕事以外の生活(育児・介護・生涯学習・趣味・ボランティアなど)との両立、働き方の見直し(生産性向上・健康管理・労働環境整備)など、施策の改良に取り組んでいる。

 このように、ダイバーシティ経営とは、LGBTだけを擁護するための経営戦略ではない。性的指向に関わらず、総ての社内セクションはもとより、顧客サイド・株主サイド、さらに、会社の外部である地域社会づくりにも貢献するコンセプトを持つ。

 資生堂の企業理念を読むと、次のような記述が目に留まる。

 「日本には、今なお、同和問題、外国人差別、性差別、高齢者や子供に対する虐待、エイズ問題など、多くの人権問題があります。これらの差別や虐待をなくすためには、私たちが互いの人権を尊重することが大切です」

 「私たちは、自分自身の人権を主張するためにも、まず、他人の人権を認め、尊重します。人種、民族、国籍、宗教、信条、性別、社会的身分、門地、障害、病気、性的指向、年齢などによる差別、虐待や、セクシュアルハラスメント、モラルハラスメントなどの嫌がらせは、絶対にしませんし、また、許しません。このルールは、採用時にも守られるべきものです」

LGBT(セクシュアル・マイノリティー)理解へ企業の取り組み進む | (記者撮影)
(記者撮影)
LGBTフレンドリー企業との良好な相互関係を築く
 ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス(人事部)の『グローバル・リーダーシップ&ダイバーシティ(GLD)』は、今年5月に開催された東京プライドフェスティバル(LGBTと、その支援者、NHK教育TV、および、さまざまな社会問題に取り組む団体によるコラボ祭り)に、初めてブースを出展。障害者アートの団体、住む家のない人たちの自立支援NPO、不登校生徒(だった人たち)のための大学などの広報ブースと肩を並べ、一般向けに、同社のダイバーシティ経営について紹介するアウトリーチを行った。

 ダイバーシティ経営は、このように、社内活動だけに留まらず、その一環として、社会一般を対象にしたLGBTについての理解促進、偏見や差別感の払拭など、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーの可視化と、ヘテロセクシュアル(異性愛者)を含む『性的指向を超えた共生社会』の実現を訴えるあり方へと形態を派生させている。

 この記事で紹介したような企業が、そのダイバーシティ経営戦略の流れの中で、例えばプライドパレード(LGBTと、その支援者によるパレード祭り)へのスポンサーシップ(協賛=資金提供)など、LGBT主体の啓発活動に対し、ためらいなく協力を名乗り出ていただけるよう、僕らは強く願っている。そして、これから、ダイバーシティ経営へと舵を切る企業・団体が、ますます増えてゆくことも。

 だからこそ、ゲイジャパンニュース(GJN)が取り組み始めた『LGBTダイバーシティ・ワークショップ』に、僕は大きな希望を抱く。この取り組みをベースに、ひとつでも多くの企業・団体が、ダイバーシティ経営とは何かに目覚め、新しい価値観を共有する航路を選択して欲しい。

 いつの日か、日本IBMや富士通、資生堂、そしてゴールドマン・サックスといったLGBTフレンドリー企業の巨大広告が、プライドパレードを彩る華やかなフロート(花車)に堂々と掲げられ、僕らゲイ(そして、レズビアン/バイセクシュアル/トランスジェンダーなどの人たち)が挙(こぞ)って、積極的にLGBTフレンドリー企業を支持・応援するような相互関係が築かれることを、夢見てやまない。
◇ ◇ ◇

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